そして、いよいよ今回最も期待していた故宮博物院へバスが着いた。
 故宮博物院には、中国5,000年の秘宝を70万点収めてある。87年前、孫文がラストエンペラーを故宮(紫禁城)から追い出して、この博物院が設立され、皇帝の私有物だったこれらすべてが国民の宝となった。ところが、抗日戦争が勃発して、蒋介石が特に重要な秘宝を運び出して逃避を続け、北京、南京、重慶、昆明と移され、最後に台湾へとたどり着いたのがこれらの宝物だ。
 中国の5,500年前の新石器時代の翡翠の彫物から、4,400年前の陶器、3,300年前の青銅器・象形文字、2,200年前の秦の始皇帝の時代、B.C200年の漢の武帝の時代、A.C200年の金印の時代、220年〜550年の日本の古墳時代、さらに随・唐・明・清と、中国の歴史の遺産が並ぶ。


故宮博物院の正面

 この故宮博物院の前に降り立ったとき、胸がふるえた。とうとう来たという気がした。NHKで「中国5,000年の秘宝」という番組を見て以来、一度は見に来たいと思っていたからだ。ブルーの屋根の白い建物と蒋介石の銅像。勇んで階段を登った。どんなに急いで頑張って見ても、ほんの一部の一部しか見えないのだが、それでもずいぶんたくさんの物を見た。


故宮博物院の行政執務ビル

 当然のことながら、カメラは持ち込めないので、脳裏に焼き付けるしかない。
 覚えている物をあげてみると、
・世界の翡翠(ビルマ・ウィグル・台湾)
・秦院長のコレクション(象牙・骨・竹の彫刻)
・漢代の死者の手に握らせる豚の彫刻(頭数の多少で貧富を示す)
・清代の翡翠でできたミンチ
・新石器時代の圭
・明代の翡翠の蝉(死者の口の中に入れる)
・新石器時代の玉壁・鉾・刀・斧・鉞
・清代の翡翠の屏風(48枚の翡翠でできている、昭和天皇が貰われていたが、終戦後返却された)
・清代の翠玉白菜(賄賂役人を象徴する蝗が2匹くっついている)
・清代のカバラ飲皿(高僧の頭蓋骨に金のメッキを施してチベット文字が刻まれている)
・甲骨文字



・清代の妃の絵(如意棒を持って威張っている)
・如意棒(孫の手だが権力の象徴で真珠や翡翠や金で作られ豪華なもの)
・清代の多宝塔(宝物が48個入で閉じれば円形、開けば屏風、逆にすれば四角柱になる皇帝用)
・明代の漆器(40回塗ってある)
・清代の象牙の透かし彫り(3代かかって完成)
・商代の青銅のラッパ飲み
・鼎
・掛軸(判子の多いものほど価値が高い)
・宣統窯(ラストエンペラーの釉椀で蝙蝠や龍の絵がある)
・唐三彩
・明代の釉薬(コバルトでブルー・銅で赤・鉄で黒・を出す)
・青磁器



等々だ。
 写真に撮れなかったのは残念だが、あの薄暗い展示室にあった、翡翠や金や、骨や象牙や、青銅や鉄や、漆器や陶器や、彫刻や絵画や、屏風や掛軸など、夥しい数の芸術品や秘宝を見ることができて、心の中にもまた宝物が増えたような気がする。
 

 


 

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